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Ryu

July 24, 2023

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小説式ライティング練習

晩夏のむっとした空気にお香のにおいが漂っており、林の中の隠れ場所から蝉《セミ》の鳴き声が、小さな都会の墓地に響き渡る。事情を考慮すれば、哀歌と言ってもいいだろう。ほんの数時間後、空気が冷えていき、蜩《ひぐらし》は伴奏を始める。その後は夜を待つ螽斯《キリギリス》の独奏。
 この真っ黒な出で立ちは、今日のような暑い日には非常に着心地が良くないが、我慢しないわけにはいかない。自業自得、と言うことだから。せめてこの一日の苦しみを引き受けるのには、僕は恐らく十分に悪行を重ねているだろう。
「ちょっと、飲みすぎじゃない? って何度も言ったのに、やっぱりこうなったとは――」
「だって、どんなに関係がぎくしゃくしてたって、お母さんって今日くらいは顔を出したらよかったのに――」
 ふと、人々の会話の断片を鈍く耳にする。汗でベタベタになった首筋を掻き、氷水を一口飲んでみるが、キンキンと歯の根まで貫く。
「――圭介くん?」
 後ろから聞きなれた声がする。ちょっと怯んで、後ろを振り向く。
「久しぶりだね。元気してた?」
 手前にぽつんと立っているのは、五年ぶりに目にしていない、三十代後半の男性。以前より痩せていて、良好な顔の特徴が目立っているせいか、ぴったりした黒いスーツが似合っているせいか、何かしらの恰好良さがある。髭をすっかり剃り落とした顔と、きれいなセンタパートにした艶やかな髪で、いつにも増してハンサムと言わざるを得ない。筋トレでもしているだろう。
「何とかしてますよ」僕は、つい頭部から足先までじろじろと見ながら頷く。
「まあ、元気でなかったら何とも言わないからね。」延井《のぶい》が鼻から長いため息をつく。「ここが久しぶりの再会の場所になったなんて、嫌だったね。」
 僕はまたしても頷く。
「どんなに、沢山のことを考えてるだろうね。」
 僕から抵抗を察したせいか、延井は少し引き下がる。それに対して、少々後ろめたい思いをする。
「いや、ちょっとボーッとしているだけです。」
 今回は、延井が軽く頭を下げて頷く。
「さあ、暑いから影のところに移動しようか?」
 延井は腕を上げ、他の参列者から少し離れたところを指す。僕は賛意を示した後、従順について行く。


The scent of incense drifts through the late summer air, and the cries of cicadas echo through the small city graveyard from their hiding places within the woods. Given the circumstances, one could say they're singing an elegy. In just a few hours or so the air will cool and the evening cicadas will begin to accompany them. Then, the nighttime katydids will perform solo.
This all-black outfit is far too uncomfortable for a hot day like today, but I have to bear it. "What goes around comes around," as they say. I've surely done enough to warrant one day of suffering.
"...I asked him so many times to stop drinking so much. For it to wind up like this..."
"...And for his mother not to show up on today of all days, even if they weren't close..."
I dully overhear snippets of conversations. I scratch at the back of my sweaty neck and take a sip of water, but the cold pierces to the roots of my teeth.
"Keisuke?"
I hear a familiar voice from behind me. Flinching, I turn around.
"It's been awhile, hasn't it. Have you been well?"
Standing alone before me me is a face I haven't seen in five years. He looks good, maybe because he's lost weight and his nice features stand out, or because the tight black suit fits him well. With his clean-shaven face and glossy hair parted cleanly down the center, I must admit he's more handsome than ever. He might have even started lifting weights.
"I'm doing alright," I nod, looking him up and down.
"Well, I wouldn't blame you if you weren't," Nobui sighs. "I'm sorry our reunion had to happen here."
I nod again.
"You must have a lot on your mind." Perhaps sensing my resistance, Nobui backs off a little. I can't help but feel a bit regretful.
"No, I'm just spacing out."
  This time, it's Nobui who lowers his head and nods gently.
  "It's hot. Why don't we move into the shade?"
  Nobui raises his arm and gestures to a place a slight distance away from the other attendees. I express my agreement and follow him obediently.

小説
Corrections

晩夏のむっとした空気にお香のにおいが漂っており、林の中の隠れ場所から蝉《セミ》の鳴き声が、小さな都会の墓地に響き渡る。

事情を考慮すれば、哀歌と言ってもいいだろう。

ほんの数時間後、空気が冷えていき、蜩《ひぐらし》伴奏を始める。

その後は夜を待つ螽斯《キリギリス》の独奏。

この真っ黒な出で立ちは、今日のような暑い日には非常に着心地が良くないが、我慢しないわけにはいかない。

自業自得、と言うことだから。

せめてこの一日の苦しみを引き受けるのに(は)、僕は恐らく十分に悪行を重ねているだろう。

って何度も言ったのに、やっぱりこうなったとは――」
「だって、どんなに関係がぎくしゃくしてたって、お母さんって今日くらいは顔を出したらよかったのに――」
 ふと、人々の会話の断片を鈍く耳にする。

汗でベタベタになった首筋を掻き、氷水を一口飲んでみるが、キンキンと歯の根まで貫くしみる

「――圭介くん?

」  後ろから聞きなれた声がする。

ちょっと怯んで、後ろを振り向く。

「久しぶりだね。

元気(に)してた?


 手前にぽつんと立っているのは、五年ぶりに目にしていない、三十代後半の男性。

OR 五年間目にしていない

以前より痩せていて、良好な顔の特徴が目立っているせいか、ぴったりした黒いスーツが似合っているせいか、何かしらの恰好良さがある。

髭をすっかり剃り落とした顔と、きれいなセンタパートにした艶やかな髪で、いつにも増してハンサムと言わざるを得ない。

筋トレでもしているだろう。

「何とかやってますよ」僕は、つい頭部から足先までじろじろと見ながら頷く。

「まあ、元気でなかったら何とも言わないからね。

」延井《のぶい》が鼻から長いため息をつく。

「ここが久しぶりの再会の場所になったなんて、嫌だったね。

」  僕はまたしても頷く。

「どんなに、沢山のことを考えてるだろうね。


 僕から抵抗の反感を察したせいか、延井は少し引き下がる。

それに対して、少々後ろめたい思いをする。

「いや、ちょっとボーッとしているだけです。

」  今回は、延井が軽く頭を下げて頷く。

「さあ、暑いから影のところに移動しようか?

」  延井は腕を上げ、他の参列者から少し離れたところを指す。

僕は賛意を示した後、(大人しく/従順について行く。

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July 24, 2023

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nambatsuyoshiさん、いつもありがとうございます。

小説式ライティング練習


晩夏のむっとした空気にお香のにおいが漂っており、林の中の隠れ場所から蝉《セミ》の鳴き声が、小さな都会の墓地に響き渡る。


This sentence has been marked as perfect!

事情を考慮すれば、哀歌と言ってもいいだろう。


This sentence has been marked as perfect!

ほんの数時間後、空気が冷えていき、蜩《ひぐらし》は伴奏を始める。


ほんの数時間後、空気が冷えていき、蜩《ひぐらし》伴奏を始める。

その後は夜を待つ螽斯《キリギリス》の独奏。


This sentence has been marked as perfect!

この真っ黒な出で立ちは、今日のような暑い日には非常に着心地が良くないが、我慢しないわけにはいかない。


This sentence has been marked as perfect!

自業自得、と言うことだから。


This sentence has been marked as perfect!

せめてこの一日の苦しみを引き受けるのには、僕は恐らく十分に悪行を重ねているだろう。


せめてこの一日の苦しみを引き受けるのに(は)、僕は恐らく十分に悪行を重ねているだろう。

「ちょっと、飲みすぎじゃない?


って何度も言ったのに、やっぱりこうなったとは――」 「だって、どんなに関係がぎくしゃくしてたって、お母さんって今日くらいは顔を出したらよかったのに――」  ふと、人々の会話の断片を鈍く耳にする。


って何度も言ったのに、やっぱりこうなったとは――」
「だって、どんなに関係がぎくしゃくしてたって、お母さんって今日くらいは顔を出したらよかったのに――」
 ふと、人々の会話の断片を鈍く耳にする。

汗でベタベタになった首筋を掻き、氷水を一口飲んでみるが、キンキンと歯の根まで貫く。


汗でベタベタになった首筋を掻き、氷水を一口飲んでみるが、キンキンと歯の根まで貫くしみる

「――圭介くん?


This sentence has been marked as perfect!

」  後ろから聞きなれた声がする。


This sentence has been marked as perfect!

ちょっと怯んで、後ろを振り向く。


This sentence has been marked as perfect!

「久しぶりだね。


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元気してた?


元気(に)してた?

」  手前にぽつんと立っているのは、五年ぶりに目にしていない、三十代後半の男性。



 手前にぽつんと立っているのは、五年ぶりに目にしていない、三十代後半の男性。

OR 五年間目にしていない

以前より痩せていて、良好な顔の特徴が目立っているせいか、ぴったりした黒いスーツが似合っているせいか、何かしらの恰好良さがある。


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髭をすっかり剃り落とした顔と、きれいなセンタパートにした艶やかな髪で、いつにも増してハンサムと言わざるを得ない。


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筋トレでもしているだろう。


This sentence has been marked as perfect!

「何とかしてますよ」僕は、つい頭部から足先までじろじろと見ながら頷く。


「何とかやってますよ」僕は、つい頭部から足先までじろじろと見ながら頷く。

「まあ、元気でなかったら何とも言わないからね。


This sentence has been marked as perfect!

」延井《のぶい》が鼻から長いため息をつく。


This sentence has been marked as perfect!

「ここが久しぶりの再会の場所になったなんて、嫌だったね。


This sentence has been marked as perfect!

」  僕はまたしても頷く。


This sentence has been marked as perfect!

「どんなに、沢山のことを考えてるだろうね。


This sentence has been marked as perfect!

」  僕から抵抗を察したせいか、延井は少し引き下がる。



 僕から抵抗の反感を察したせいか、延井は少し引き下がる。

それに対して、少々後ろめたい思いをする。


This sentence has been marked as perfect!

「いや、ちょっとボーッとしているだけです。


This sentence has been marked as perfect!

」  今回は、延井が軽く頭を下げて頷く。


This sentence has been marked as perfect!

「さあ、暑いから影のところに移動しようか?


This sentence has been marked as perfect!

」  延井は腕を上げ、他の参列者から少し離れたところを指す。


This sentence has been marked as perfect!

僕は賛意を示した後、従順について行く。


僕は賛意を示した後、(大人しく/従順について行く。

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